『五瓣の椿』(山本周五郎)感想 ー 純粋な娘の法と正義の物語

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『五瓣の椿』(ごべんのつばき)は、山本周五郎作で1959年に文庫化したロングセラーの時代小説です。過去にドラマ・舞台・映画にもなっています。

「この世には御定法で罰することのできない罪がある」
最愛の父が死んだ夜、自分が父の実子でなく不義の子なのを知った「おしの」は、淫蕩な母とその相手の男たちを、自らの手で裁くことを決心する。おしのは、母を殺し、母の男たちの胸につぎつぎに銀の釵(かんざし)を打ち込み、その枕元に赤い山椿の花びらを残してゆく・・・。

(本書あらすじ)

初めて山本周五郎さんの作品を読みました。50年以上も前の作品だったんですね!

あらすじのとおり、主人公の「おしの」が育ての父を苦しめた母を殺し、その後母と不倫関係にあった男たちを色香でおびき寄せて復讐していく話です。おしのは純粋な心を持った娘で、母や男たちへの復讐の動機は「父を苦しめたから」ではなく「人間という存在を汚すものだから」。江戸時代のお話で、当時は男女関係も奔放だったのか?、作中では愛人を囲っている男性やよその女性に子供を産ませて知らん顔している男性がよく出てきますが、そんな時代でも男女の関係には誠実さと信頼が必要であるとおしのは正義感を抱えて復讐を果たします。「法で裁けない罪と人間の掟」をテーマにした作品です。

ちょっとどろどろしたテーマなのでこうしてブログに感想を書くのもどうなのかな?と一瞬悩みましたが、この作品で私がよかったと思うのはイメージの対比が想像力を刺激するところです。

おしのは母と不倫関係にあった男たちを色香でだまして復讐しますが、おしのは決して自分の体は汚しません。清らかであることを最後まで貫きます。不倫や男女関係・罪といったどろどろしたテーマに対して、おしのの上品さと清らかさ、正義感が最後までこの作品を品よくしています。あとはおしのの美貌・肌の白さと、復讐の舞台となる夜の闇、復讐の証である赤い椿の花びらのコントラストも、視覚的な対比があり想像力を刺激します。

登場人物たちの「〜でしょ、そうじゃなくて?」といった上品な言葉遣いが耳慣れない感じで、個人的にはそれもまたエッセンスとして楽しめました。

テーマはよくあるもので、作品自体はさらっと読めてしまうボリュームですが、そうした色彩やイメージの対比で想像力を刺激する感覚が新鮮に感じました。

普段デザインの仕事をしているとどうしても目に見えるものばかりに意識がいってしまうので、想像力を使うことや文字だからこその楽しみ方ができるのが読書の良さだな〜と、あらためてそんなことを感じた作品でした。

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