『かがみの孤城』(辻村深月)感想:将来子供に読ませたい、友情と自分の居場所探しファンタジー

読書記録

『かがみの孤城』は2018年本屋大賞を受賞した人気長編ファンタジー。作者の辻村深月さんは1980年生まれ。千葉大学教育学部卒業し『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞を受賞しています。本屋大賞と聞くと、一般人の私たちの感覚に近い書店員さんたちが推薦している安心感があってとっつきやすい気がしませんか?

前情報なく読んでみたのですが、大人も子供もとても読みやすく、最後には心があったかくなる良いお話でした。とくに主人公たちと同じ中学生くらいの方やその親御さん達に読んでみていただきたいです。そうじゃない方も「こんな時代があったなぁ」とセンチメンタルな気持ちになります(笑)。私はいつか自分の子供に読んでほしいと思いました。

この本がおすすめの人

  • 学校に行くのがちょっと億劫な時がある学生
  • 将来のことが不安で考えるのが怖い学生
  • 学生の子供をもつ親
  • 学校や身の回りの人間関係に悩みがある人
  • 自分の居場所に悩む人
  • 心あたたまるファンタジーが好きな人

おすすめ度 ★★★★☆

〜あらすじ〜

クラスメイトから嫌な目に合わされ学校に行けなくなってしまったこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた。城の案内人である狼面の女の子は「願いが叶う鍵」を探せという。現実と城を行き来しながら、城の中で7人が打ち解けていくうちに様々な真実が明らかになる・・・

全体を表すと『自分の居場所を探す物語』な気がしました。

主人公のこころは自分に非がないのにクラスメイトから嫌な目に合わされ、孤立して学校に行けなくなってしまいます。「こころの学校」という学校に行けなくなった子達の通うフリースクールで、喜多嶋先生という優しい女性に出会いますがこのスクールにも通えず、一人で家からも出られないほど臆病に。でも城の友人たちとの出会いでこころの考えも行動も少しずつ変わっていきます。

学校という居場所がなくなって、家という場所も親に申し訳なくて居づらくて、フリースクールという新しい居場所も不安が優ってしまい行けなくて、そんな中で見つけた「城」という居場所。でもずっと居られるわけじゃない。現実で自分の居場所を探さなくては行けない。じゃあどうする?

大人になるとよく「学校ってすごく狭い世界だったんだね」といった話をしたり思ったりしませんか?私も学生の時はほとんど家と学校の世界しか知りませんでしたから、こころのように学校でひとりぼっちになってしまったら塞ぎ込んでしまうんじゃないかなと思います。「いろんな生き方があるよ」とか「人はそれぞれ違うからうまくやってこうよ」というのは大人の目線の世界で、子供がそれを理解して踏み出すのはとても勇気がいること。そしてその勇気や考えの変化は人との出会いなんだなぁと思いました。

またこの喜多嶋先生がとても頼りになる大人で、なかなかこんな風に子供を理解して支えてくれる人はいないです。この人もかなりいい役をしてくれています。こころや城に集められた仲間たちがどのように変わって行くのか、どんな居場所を見つけたのか、嫌な目に合わせてきた子達とはどのように決着したのか。応援しながら読んでみてください。

話の展開が早すぎず遅すぎずちょうどよくて、伏線もすごくきっちりとしていて最後はきれーいにまとめてくれました。なんだか優等生の小説を読んだみたいです(笑)ご都合主義に見えてしまう人もいるかもしれませんが、こういう話だったらこのくらい都合よくまとめてくれた方が後味がいいです。アニメ化したら観てみたいな。

正直、サイトに書かれているような感涙必至!ほどの感動はなかったんですが、最後の方は一気に読みたくなりましたし「あぁよかったなー」とあったかい気持ちになりました。いつか自分の子供に読んでもらいたいです。

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